ガンはミステリアス
2011年秋、抗ガン剤治療をしていた頃、箱根で。この後、副作用が強くなり抗ガン剤治療はやめた。
医師の独善的な姿勢こそ問題だ
10月3日だったか、テレビに抗ガン剤治療に否定的な近藤誠医師が出たのを受けて、Twitter上では、匿名アカウントの医師が、「近藤誠医師の影響で患者が間違った選択をするようになり問題だ」と意見しているのを見ました。私は、この匿名医師のツイートに「テレビを見ただけで安易に感化されるおろかでかわいそうな患者像」を見て、全く嫌なヤツだぜ!と思うわけですが、それは差しおいても、こうした主張にはやはりNO!を主張したい。ガン治療に、「正しい選択」と「間違った選択」などあるのだろうか。残念ながら現代医療の最高峰をもってしても、ガンは制圧できていません。そうである以上、医師が一方的に断ずることができる「正しい選択」など、あるはずがありません。
ガン治療にマニュアルはない
半世紀以上もガン治療に携わってきている帯津良一医師は、著書『ホリスティック医学入門』の中で、「百人いたら百通りのガンがあると思えてきます。最先端の高度な治療を受けても治らない人がいるかと思えば、怪しげだとされている民間療法で劇的に治る人もいます。また何もしていないのに、自然に治ったという人もいます。それくらい、ガンには個性があって、それぞれが予期せぬ方向に動くのですから、マニュアルなどつくれるはずがないのです。『ミステリアス』。これこそ、ガンを語るにはもっとも適した言葉だと思います。」と書いています。
「ガンはミステリアス」 帯津医師の言葉を直に聞く
私は、約1年間、抗ガン剤治療をやりました。しかし、治療を重ねるうちに副作用で体が弱り、このまま続けたら抗がん剤で死んでしまうと感じ、治療をやめました。やめようと決心がつくまではかなり悩みました。そこで、上述の帯津良一医師のところをたずねました。「抗がん剤はやめたい。どう思いますか?」と質問しました。「やめていいよ」という医師のお墨付きが欲しかったんだと思います。帯津医師はとても柔和な顔をした方でした。1936年生まれですから、ご高齢ではありますが、若々しい印象でした。私の問いを受けて、医師は、柔和な顔をさらに明るくし身を乗り出すようにして、「おおー!どうするかね。でも、がんはミステリアスだからねぇ」とだけ言いました。そこには、押しつけや医学的説明などまったくありませんでした。あるのは、何千人とガン患者の生き死に接し生命の神秘に向き合ってきた、感慨のようなものだけでした。この帯津医師の「ガンはミステリアス」発言を直に聞く体験をして、背中をポンと押されたような気がしました。霧が晴れたように感じたものです。人間は神秘的な宇宙に生きる神秘的な生き物なんだ。だから何が起きるか分からない。現代医療がはじき出す生存率に怯えきっていましたが、「確率」じゃなくて、「神秘」にかけようと思いました。これは、医師への依存から解放された瞬間でもありました。
医師は、ミステリーに挑む良き伴走者であってほしい
ガンに限らず、人間の身体は分からないことばかりなんだろう。まさにミステリアスだ。抗がん剤を選ぶのも、民間療法を選ぶのも、あるいはその抱き合わせでいくもよし。選択は無限にあってそのどれも正解なんだと思います。医師には、その豊かな経験を活かして、ガンというミステリーに挑戦する良き伴走者であって欲しい。そう強く望みます。