かわいそうながん患者病からの脱出 養生塾のすすめ


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烏賀陽弘道



先日、がんになってからの怒濤の3年をともに過ごすはめになった!夫に、「同居人として、がん治療にもっとも効果的なことは何だと思うか」とたずねてみました。そうねぇとひと呼吸置いて彼は、「大事なのは、病気の原因を医者に取り除いてもらえるという幻想を捨てることじゃないか」と言っていました。病気の原因を医者に取り除いてもらえるという幻想を捨てる。これが難しい。幻想だとは思えない。医者に治してもらえると思い込んでしまう。医者にすがってしまう。
私の場合、幸運にも、社会的にも人格的にも立派な方が主治医でした。これ以上ない適切な摘出手術、分かりやす説明で、選挙に出たいという私の思いに添って抗がん剤治療を組み立ててもくださいました。恵まれた治療を受けていましたが、次第に、主治医に依存していくようになりました。耳慣れない医学用語、次々に処方される抗がん剤は溺れるように苦しい。それでもひたすらついていく。すっかり受け身のがん患者になった私は、強い無力感に苛まれるようになりました。

もしかしたら死ぬかもしれない。トイレに入っては大泣きし風呂のなかでは涙がこぼれました。マイナスパワー炸裂でした。ですが、しばらくしたら、こんなことしていて健康になれるはずがないと思うようになって、一念発起して出かけたのが、帯津良一医師が長野県飯綱高原でやっている「がん患者の為の合宿養生塾」でした。

ここで私はブレイクスルーします。長野飯綱高原のすばらしい環境のなか、帯津医師を囲み車座になって行った患者どうしの自己紹介は、今でも忘れません。みなすごくパワフルでした。抗がん剤を続ける人、やめた人、食事療法だけの人、心理療法も受けている人、私よりも病状が厳しい人もたくさんいました。それぞれに病気だけでなく病気をつくった自分に向き合い、力強く説明していました。長い自己紹介でした。
私は、合宿の一番最初のこの自己紹介タイムだけですっかり圧倒されました。こんなふうに自分が生き伸びる事に一生懸命になっていいんだ、と思ったのを覚えています。ついに発言の番が回ってきました。参加者は事前に帯津先生に伝えたいことをファックスで送ることになっていたので、私も送ったファックスを読み上げられました。そこに「死ぬのが怖いんです。どうしたらいいかわかりません」と書いていました。これをコーディネーターの塩沢みどりさんが大きなよく通る声で読み上げました。とても恥ずかしかった。それまで死への恐怖にどっぷりつかりメソメソしていたわけですが、それをそのまま、同病者の前でさらけ出すことになってしまったんです。あちゃ~、、という感じでした。この時、ようやく「かわいそうながん患者病」から脱け出し始めました。

で、「死ぬのが怖いんです」という私に、帯津先生はなんと言ったかというと、「死ぬのは私も怖い」とサラッと言いました。この一言を聞いて、私は、「な~んだ!そうよね!」と急に憑き物が落ちたような気分になりました。長い時間かけた濃密な自己紹介タイムを経て、参加者どうしの距離はゆるみ、その後続いた丸2日間の合宿はとても充実したものになりました。そうそう、この合宿の参加者には、大人気の帯津三敬病院の予約を早めに入れてもらえるという特典もついていました。今年の夏も帯津良一医師の「がん患者の為の合宿養生塾」が開かれるようです。詳細はサイトをご覧ください。