白浜レスキューネットワークの視察報告
●昨年11月19日~20日に 和歌山県白浜町に
地域の自殺対策を推進する地方議員有志の会で
視察にいきました。そのご報告です。
● 白浜で 断崖絶壁の自殺対策
景勝地で有名な観光スポット、和歌山県の白浜町の
三段壁は、自殺する方が多い場所です。
三段壁周辺では、定期的に
白浜バプテスト教会と町役場、警察の3者による、
パトロールが行われています。
また、ここでは、パトロールだけでなく、
三段壁におかれた電話ボックスのわきには、
「いのちの電話」と書かれた看板が設置してあって、
最後のSOSが出せるようになっています。
↑ 公衆電話の脇には、だれでもが使えるように、
10円玉もおかれています。
●白浜バプテスト教会の藤藪牧師のとりくみ
この活動の中心になっているのが、
白浜バプテスト教会↓の牧師、藤藪庸一さんです。
藤藪さんは、「白浜レスキューネットワーク」というNPOを
2006年に立ちあげて、
牧師としての活動とは別に、自殺救援活動、自立支援活動を
行っています。
↑藤藪庸一牧師
藤藪牧師は、
三段壁から、今まさに自殺しようとしている方を
時には説得し、教会で休養するようにすすめて、
必要があれば、牧師自身のご家族とともに
その方たちと共同生活しながら、自立に向けた
手助けをしています。
江口が、教会で宿泊させていただいた夜も、
数人の共同生活者の方が、牧師のご家族とともに、
夕飯をとり、一緒に暮らしていました。
藤藪牧師の活動は、まさに年中無休です。
私たちが滞在した夜も、夕飯の最中に
公衆電話からのSOSが携帯電話に入りました。
電話をうけて藤藪さんは、
すぐに、軽トラックでかけつけ、
三段壁の電話ボックスのそばにいた男性を
教会にむかいいれていました。
教会から三段壁までは車で2~3分ほどです。
こうした活動を、一年中365日続けています。
深夜、藤藪牧師からうかがったお話しの一部を
ここに紹介させてください。
●藤藪牧師のお話
三段壁から自殺しようとした方のサポートをしてきています。
約20年間に672人の人の命を救っています。
その後、後を継いだ私(藤藪牧師)が、
活動を引き継いで、10年間で333人の人を救っています。
活動はじめた当初は、すべて自腹をきってやっていました。
生活費としてたくさんのお金をもらったら、
それが権利になってしまいます。
そうなると、こちらが本当のことを言えなくなってしまう。
自殺の問題は、その人が抱えている問題を本当に変えていかないと
ダメなんです。抱えている問題に手を加えないとダメ。
そうしないと同じことをくり返してしまう。
現在は、共同生活者とは、一人ひとりと契約を結んでいる。
Aさんは5,000円、Bさんは1万円払う、といったふうに。
そうしたお金のほかに会費とカンパなどで運営しています。
これは、人が人にふれあわない対策だと思う。
仮に、自分も何かしたいと思う人がいたとしても
普通の人が関われない。
また自殺の問題に対する深い理解が足りないようにも思う。
今、「自殺する人は自分勝手だ」なんて言うと、
総スカン食らうでしょう。そういう雰囲気があるでしょ、今は。
そうした雰囲気は、自殺の問題の本質を遠ざけてしまう。
実際に、自業自得であるようなことが原因で自殺する人もいる。
そうであるにもかかわらず、そういうことには蓋をしてしまう。
本当はそうじゃなくて、
「この人、愛しづらいよね」と見せてしまっていいんだと思う。
僕自身も感じるいら立ちがある。
僕よりも他の人はもっとそういういら立ちを感じるはず。
愛しづらい人を前にしたいら立ちを隠して、
嘘を言うと、
「そんなことは嘘だ。欺瞞だ」と思う人が必ず出てくる。
その方は、まったく、自殺の問題に耳を貸さなくなってしまう。
どう考えても、変です、という人はいる。
愛しづらい人、っています。
だけど、そうした人たちが、
どういう環境で育ってきたのか、
そうしたことを考え、みつめたとき、
その背景にあるのは、社会の問題です。
日々に活動は大変だけど、
教会で暮らす共同生活者がいなくなるとさみしくなるんです。
この週末にまた2人が自立します。
さみしいんだけど、責任を果たせてほっとするのも事実。
こういう感覚は、どうやら、
僕の子どもたちも持っているようなんです。
僕の場合、布教は二の次。
まずはその人が幸せになってくれたらいい。
将来は、その人が教会とつながってくれたらばいいなと思う。
共同生活者には、
「どうしょうもなくなったらいつでも帰っておいで」
って思っているんです。
僕は、生活保護は一切考えていません。
僕は、彼らと共同生活しながらお互いに助け合って
なんとかしようとしているんです。
共同生活すれば、20人一緒に暮らしていても、
そんなにお金はかからないものです。
一方で、生活保護は、ぜったいになくしてほしくない制度です。
だけど、僕は、生活保護は使わない。
彼らを「丸抱え」したいと思っているんです。
どのくらい覚悟を決めて、その人と生活するかだと思う。
たとえば、グループホームをつくって一緒に生活したら、
職員の力もさらにのびるし生かされるんだと思う。
教会での日々は、方法論をつくっているわけではない。
朝のミーティングの時に、
その日やることが決まっていない人には、
「○○してね、△△してね」と伝えておきます。
ほめます。そうしたことを積み重ねて、自分で働いて
自立していけるように、手助けをするのです。
●
このほかにも、多くのことをお話しくださいました。
おいおいまたご紹介できたらと思います。
最後に、藤藪さんを囲んで、仲間の議員と一緒に
写真をとりました。
↓写真の2段目左から2番目が、藤藪牧師です。