滋賀県嘉田知事講演会 「新しい公共」から「なつかしい公共」へ

 9/22(水)
先月12日に、神奈川県内の無所属の議員(市民派議員会議)が集う勉強会がありました。滋賀県の嘉田由紀子知事におこしいただいて「地域主権の時代における自治体の挑戦」と題して、講演してもらいました。すばらしい講演でした。講演内容を江口がまとめたものをここに載せます。
(講演日 8月12日 新横浜富士ビューホテルにて)


 ●以下に嘉田知事の講演内容の要旨をまとめました


「もったいない」で闘った1期目の選挙


 「もったいない」という1期目選挙のスローガンは、
 当選後、議会からバッシングの対象になった。
 「“もったいない”は“もたいない”」と言われた。
 ”もたなかった”のは、それまでの既得権益だった。
 2期目の選挙でも「もったいない」を掲げるかどうか、
 支援者のなかでも意見がわかれた。
 しかし、2期目の選挙も「もったいない」で闘った。
 マニフェストを役所のなかに浸透させるのは難しい。
 職員からは、「知事は4年、僕ら30年」と言われたことも。
 


 2期目のマニフェスト選挙


 2期目マニフェストは参加型でつくりました。
 知事公務としては「ざぶとん会議」をやっていた。
 公務と政務は完全にわけた。秘書課に政務を持ち込まない。
 政務としては「茶話会」を行いこれに1600人が参加した。
 1600人の声をマニフェストつくりに生かした。
 第二次産業が滋賀県は50%を占める。
 しかしこれらの工業は海外需要が多く、
 昨今の不況で大きな影響を受けた。
 有効求人倍率は2から0.37に。
 自治体としては内発的求人が必要だと考えた。



 


 人間の一生とライフステージを持ちだしマニフェストにした


 人生を全うできない人がこんなに多いのに
政治がだまっていてはいけない!これが私の原点だ。
怒りの原点。
人が産まれてから育つまで、働き出してから死ぬまで、
といったふうに人生の流れにあわせてマニフェストをつくった。
いま、男性の有配偶率は、正規か非正規社員かによって
大きく左右されてしまう。
この1ケ月(20108月)は人生の不安を強く感じた。
大阪市の23歳の下村さんが2人の子どもを置き去りにして
死なせてしまったり、高齢者の所在不明者問題がおきたり。



マニフェストは縦割りマニフェストにしないようにした。
○○部 ××部といったように役所組織別にマニフェストを
つくらないようにした。
また死の問題もタブーにしなかった。
不自然死や孤独死が増えているので、
検死のニーズが高くなっている。
在宅、往診の仕組みが必要だと思った。

  


 国はまだまだ ザブザブだ


過去10年間で、国の歳出は8.5兆円増えた。
一方で地方自治体は-7.7兆円になっている。
三位一体改革というけれど、実態は違う。
ダム建設にしても、治水効果だけを考えるのであれば、
ダムじゃなくてもいい。
だいたい50年間も計画がありながらつくっていないダムは、
いらないからだ。近畿地方整備局の予算は膨大だ。
地方整備局は住民の眼も届かない。



 


 琵琶湖フィールドワークから見えてきたこと 
 
 私は学生時代アメリカに留学した。
 アメリカ社会がもたないと思ったのは1つはエネルギー問題。
 でっか
いムスタングで走り、全館暖房。
 もう一つは家族の問題。
 チャイルドアビューズという言葉を初めてアメリカで知った。
 日本はアメリカ社会をまねてはいけないと思った。
 日本の世代間つながりを見据える仕事をしたかった。



90
年代、琵琶湖博物館建設に関わった。
琵琶湖はリン撲滅運動が盛んだった。
これは特定の物質を原因だとする近代科学主義だ。
そうではなく、琵琶湖と人との濃密な関わりを
取り戻さないといけないと思った。
琵琶湖は世界的な価値がある。
現在の琵琶湖は、田んぼもあり製造業もさかん。
光ファイバー普及率も高い。
琵琶湖の集落はごみ一つ落ちてない。
水道もあるけど湧水もある。
半自然、人の手が入った自然の状態がここにはある。
私は琵琶湖博物館の学芸員時代に3000の自治体を歩いてまわり、
琵琶湖の価値を知った。
昭和30年代、琵琶湖の水は飲めた。
今も飲めます。
水保全の社会的仕組みがあったからだ。
時間の使い分け、空間の使い分け、
地域共同体の配慮があった。
たとえば、鍋を洗うと出るご飯粒を小魚が食べて、
その魚を人が食べた。
またみんなが使う湖水で不浄なことはしない、
というはばかり意識があった。
食器を洗う場所を選択する場所をわけたりした。
昔ながらのコミュニティの仕組みを、
私は「なつかしい未来」と呼ぶようにしたい。
琵琶湖で昔ながらのコミュニティを壊してしまったのが、
琵琶湖総合開発だ。琵琶湖総合開発で下水道は見えなくなった。
見えなくなると私たちは他者に依存していく。
自分で判断しなくなる。
受け身にしてしまう。
内面的な豊かさが失われてしまう。


 


私は、「良い子は川で遊びましょう」と言っている。
子どもにやってはいけない3kは、
「介入」「過保護」「過干渉」。
行政の過保護、過干渉(普及・啓発)や過情報(○○計画)が、
住民を行政依存体質にさせてしまう。
私は「大雨が降ったらまずは自衛していください」と言っている。行政に判断を預けていざというときに人の命が守れない。
滋賀県では、「流域治水」の方法で取り組んでいる。
科学値は大事だがそれだけで自然は制御できない。


 



役所は「啓蒙・啓発・普及」がお好き 
 県の職員には、家に帰って奥さんとテーブルについて話して、
奥さんがわからない言葉は知事説明に使わないでと言っている。
また、「啓蒙」「啓発」「普及」という言葉を使わないでと言っている。「探見!発見!
ほっとけん!」が重要だ。
行政のテクノクラート的制御論に住民的共感論を。
そうでないと、何のために行政を預かっているのか
行政マンがわからなくなっている。



「なつかしい公共」「社会成長」を目指す
 
2期目の知事選挙は、
40万票(419921票)の得票を得て、
19すべての市町で勝利した。だが、20万票は自民党に。
20万票は批判票だとおもっている。
今後、広域連合をつくり湖や河川を守るようにする。
議員は歳費でなく職業を持ちながらやれるようにするべきだ。
もっと普通の人が議員をやれるようにしたほうがいい。
私は、地方にとって必要なことはどの政党とも協力したい。
「超政党」でいきたい。
これからは、「経済成長」ではなく「社会成長」。
社会成長こそ、日本の子どもたちに伝えないといけない。
父権的パターナリズムではなく参加型社会に。
「新しい公共」から「なつかしい公共」へ。
なつかしい公共をつくるために、居場所を役割をつくろう。


 


 


研究者よりも政治家のほうがずっと面白い


私は、なぜ女性なこんなにしんどいんだというWHYを究明したいと考えて研究者になった。社会を変えたかった。
研究者よりも政治家のほうがずっと面白い。
社会が変わるのを実感する。
楽しくやっています。


  


 


 


会場からの質疑から


―――政策ブレインはいますか?


―――政策ブレインは地域のみなさん。県の政策を一番よく知っているのは県の職員。学者にはポイントをとらえて相談に行く。


 


―――新幹線新駅を「もったいない」としたのはなぜ?


―――乗る人がいるか、いないか。誰が使うのか 使う当事者はだれか見えなかった。本庄早稲田駅は私の父や姉が誘致した。本庄早稲田駅は通勤新幹線新駅としてつくった。本庄早稲田駅は、区画整理に金を入れていない。この点も滋賀県の栗東駅とは違った点だ。


 


ーーーーー講演の要旨は終わりーーー
嘉田由紀子知事は知事になる前は、
滋賀県立琵琶湖博物館の主任学芸員をつとめておられました。
講演の最後に、江口が平塚から来たことを自己紹介し、
質問しましたら、
嘉田知事は、「平塚は訪問したことがあるわ。私は、琵琶湖博物館の構想を練るのに平塚市博物館を訪問したのよ。平塚市博物館の浜口哲一氏には本当に多くを学ばせていただきました」とおっしゃっておられました。

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