知覚してくれたらじゅうぶん


私の乳癌が特徴的だったのは、その癌細胞がめちゃくちゃ増殖スピードが早いということでした。

2011年、震災直後の手術が終わってやれやれという感じで診察室の椅子に座ったとたん、主治医は検査結果見ながら、

「僕は乳がん専門医を長年やってるけどね。こんなに増殖スピードが早い癌細胞は見たことない」と独り言のようにつぶやいてました。

なんでも「Ki-67」という癌増殖の指標20から30%で「高値」と言われているところ、
「あなたはそれが90%なんだよね」と。
なんか珍しいもん見ちゃったなぁという感じで、話してくれた。

その様子がとても正直な感じで、
私は、
学生みたいだな、
きっと医学生ってこんな感じなんだなと、
すでにベテランになった先生の姿に彼の学生時代の頃の姿を見た気がして、
好ましいと思ったのを覚えてる。

きちんと検査し、専門家が率直な感想を言ってくれる。受け取って知覚し伝えてくれた。
それにすごく救われた。

後は、私が考えたい。
何が起きてるかを。

そう思えたのは、
主治医が変に励ましたり慰めたりしないでいてくれたからだと思う。

今も時々思い出しては、
良い先生だったな、有り難いなと思う。