法制度が生み出す無戸籍児・者問題  

「無戸籍児・者問題」は社会的暴力
昨日は、「湘南で無戸籍の支援する会」代表海老名健太朗さんと副代表早川ひとみさん、33年間無戸籍だった女性(関東地方在住)にお会いしてお話しをききました。暑いなか平塚市役所までおいでいただきました。ありがとうございます。お三人のお話しを伺って、「無戸籍児・者問題」は、社会的不承認、社会的暴力の問題だ、と感じました。

●33年間、無戸籍だった女性からお話しを聴きました

昨日お会いした無戸籍だった女性は現在33歳です。テレビで「無戸籍児・者問題」に取り組んでいる元国会議員の井土まさえさん(「民法772条による無戸籍児家族の会」代表)を知り連絡をとり、市議会議員の力添えもあって、ようやく今年の7月に戸籍をとり、住民票をとったそうです。とても素敵な方でした。初めて会ったにも関わらず丁寧に彼女自身の苦労を語ってくださいました。同じ問題に苦しむ人のために声をあげようと思われたそうです。私はメモをしながらお話しを伺っていたのですが、メモ書きにできないという気持ちになりました。彼女は幼稚園しか通っていません。小学校も中学校も一日も通っていません。仮に自分が死んでも死亡届けも受理されない。死んだら両親に迷惑をかけてしまうので誰も目につかない場所で死んだほうがいいのではないか、と考えるようになったとも言いました。確かに生きているのにそこにいないことになっているのです。生存が社会的に承認されないということによる苦しさ。涙が止まりませんでした。

●無戸籍・無住民票状態とはどういうことか
戸籍も住民票もない。これがどういうことか想像ができますか?と「湘南で無戸籍の支援する会」代表の海老名さんにいわれました。運転免許証がとれない。パスポートも、国民健康保険も、国民年金もその対象ではない。医療は全額負担になるし、小学校に通う就学案内が届きません。預貯金口座や携帯電話などの契約行為もできません。選挙権も行使できません。

なぜ無戸籍という状況が発生するのか 法制度が生み出す問題

では、いったいなぜこういう状況が発生するのかも説明いただきました。無戸籍児・者の多くが法制度の問題から発生しています。民法の問題です。「明治民法」とも呼ばれている現行民法では、離婚後300日以内に出生した子については、前夫の子とするとされています。これは、「離婚後300日問題」と呼ばれています。元夫の激しい暴力やストーカー行為で、離婚しないままに、元夫から命からがら逃れ、逃れた先でパートナーができて子どもが産まれる。しかし出生届けを出して戸籍を取ろうとすれば、民法上は元夫の子になってしまう。元夫に居場所も知られてしまう。法制度上の問題が無戸籍児・者をつくってしまっているという背景があります。

●全国で1万人はいる 無戸籍児・者 

なにも、無戸籍児・者の問題はふるい話しではない、というのを、私は昨日初めて知りました。むしろここ20年余りで増えているそうです。理由の一つには、自宅出産が減り病院出産が増えていることがあるそうです。現実的に、自宅出産ならば「300日問題」をクリアすべく出生届けをずらすなどができていたが、今は病院出産が増えてそうもいかない。横浜法務局管内では33名がいるとされているそうですが、その調査はまったく不十分で、様々な実態をあわせて推計すると、全国で1万人はいるのではないかと言われているそうです。全国で1万人と言えば、ざっとならして考えて、各自治体に5~6人はいてもおかしくないです。平塚市にもいるのではないかと思います。まずは数を把握して、そのための相談窓口を平塚市役所にもつくらないといけません。