世界で一番幸せな仕事




「俺さぁ、世界で一番幸せな仕事をしていると思うんだよね」。これ、平塚市大神で花専門の農家・花卉(かき)農家のご主人の言葉、です。「花を育てる。それを仕事にして。たいして金にならなけれど、世界で一番幸せな仕事をさせてもらってんだ」と言っていました。この言葉を聞いて、これまた、ショックを受けました。自分の仕事を、「世界で一番幸せな仕事」と言い切れる人がどれだけいるだろう。よく日に焼けた顔と日々の農作業で鍛えられた大きな体で、こんなことを言われたら、誰だって、我が身の貧しさを顧みるんじゃないだろうか。少なくても私はそう思いました。

この花卉(かき)農家さんが花栽培用のハウスを持つのも、「ツインシティ開発」地内です。約70haの開発です。落合市長の再選を受けて、急ピッチで進んでいます。地権者がつくる「組合」が事業主体になります。そこに税金も投入されていきます。地権者らが組織する「組合」が事業主体になるにもかかかわらず、約3分の1の地権者が反対をしています。この開発計画がすすめば、この「世界一幸せな」花農家さんは、ハウスも農地もなくします。生業が奪われます。農地はイオンモールや倉庫群に変わります。農業を続けたいという人は、ほかに移転して農地を求めて欲しいと、平塚市はしています。

ツインシティ開発について、私はよくこんなふうに意見されます。「大神あたりには、田んぼや畑があるけど、あのままってわけにはいかないでしょう?なんとかしないと」と。計画地から離れた街の中に住む人にもこういう意見が多い。確かに、都市型農業の行方を考えたら、このままの状態でいいとは思わない。開発そのものに私も反対じゃない。でも、市街地に住む人の「あのままじゃまずいでしょう?」という声を聞くたびに、差別的なまなざしを感じます。開発を抑制された気の毒なエリア、経済的に厳しい地権者さんたちを助けなきゃ、みたいな、そんな差別的な発想。でも、これって、かなり見当はずれだと思う。実際に、その農地を耕し、花や野菜をつくっている人は、自分の仕事を「世界で一番幸せだ」と言い切っているわけで。気の毒なのは、土から離れて暮らす私たちなのかもしれない。

ハウスを案内していただきました。中に入ると、一面、セリ科の花・ブルーレースフラワーが咲いていました。ブルーレースフラワーは、栽培に手間がかかり、あまりつくっている農家がないんだそうです。最近は都内でよく売れるとか。ピンク色のほうは、ブルーレースフラワーのラブリーピンク、という品種なんだそうです。本当に美しく、心地よい場所でした。